高血圧・糖尿病・喫煙で「認知症のない時間」が最大12.6年短くなる?今から始めたい血管の健康管理
高血圧・糖尿病・喫煙という3つの血管リスク因子が重なると、認知症を発症せずに過ごせる期間が最大12.6年短くなる可能性が報告されました。2026年に発表された最新研究をもとに、認知症予防と生活習慣病管理の重要性を内科専門医が解説します。
こんにちは。
お茶の水駅前生活習慣病クリニックの内科専門医・神経内科専門医の渡邊由衣です。
今日は認知症と生活習慣病のお話をしましょう。
認知症というと、「脳の病気だから、脳のことを考えなければ」と思われるかもしれません。もちろん脳そのものの健康は大切です。
でも、内科医としてぜひ知っていただきたいのが、「血管の健康も脳の健康と深く関係している」ということです。
2026年に発表された新しい研究では、とても興味深い結果が報告されました。高血圧、糖尿病、喫煙という3つの血管リスク因子が重なるほど、「認知症にならずに生きられる期間」が短くなることが分かったのです。
最大12.6年。「認知症のない生存期間」とは?
その結果、リスク因子の数によって「認知症のない生存期間」に以下のような差が見られました。
- リスク因子 0個: 認知症のない生存期間 約30.1年
- リスク因子 1個: 認知症のない生存期間 約26.3年
- リスク因子 2個: 認知症のない生存期間 約21.0年
- リスク因子 3個: 認知症のない生存期間 約17.5年
つまり、3つのリスク因子を持つ人では、リスク因子がない人と比べて、55歳以降の「認知症のない生存期間」が平均で約12.6年短かったのです。
12.6年。数字だけを見ると少し驚きますよね。
例えば55歳から95歳までの人生を考えたとき、「できるだけ長く、認知機能を保ちながら生活したい」と誰もが思うのではないでしょうか。今回の研究は、そのためには中年期から血管を大切にすることが重要だということを、具体的な「年数」で示した研究といえます。
なぜ血圧や血糖値が「脳」と関係するの?
脳は、たくさんの血液を必要とする臓器です。血管は、いわば脳へ酸素や栄養を届ける「道路」のようなもの。
高血圧や糖尿病などが続くと、血管に負担がかかり、動脈硬化が進みやすくなります。喫煙も血管にダメージを与えることが知られています。道路が傷んでいたら、その道路を使う車もスムーズに走れませんよね。それと同じように、血管の状態は脳の健康とも無関係ではありません。
実際、今回の研究では、3つのリスク因子を持つ人は、リスク因子がない人と比較して、認知症の発症リスクが約2.7倍、認知症を発症せずに死亡するリスクが約5.6倍でした。
大切なのは「認知症になってから」ではなく「なる前」
この研究を見て、私が特に重要だと感じたのはここです。
高血圧や糖尿病は、症状がほとんどないまま進行することがあります。「今は元気だから大丈夫」と思っていても、健康診断で血圧や血糖値の異常を指摘されたら、それは身体からの大切なサインかもしれません。
まずは「3つの血管リスク」をチェック
今回の研究で注目されたのは、「高血圧」「糖尿病」「喫煙」の3つです。
もちろん、これだけを管理すれば認知症を完全に防げるという意味ではありません。認知症には加齢、遺伝的要因、生活習慣など、さまざまな要因が関係します。
それでも、自分で改善に取り組める血管リスクを一つずつ減らしていくことには、大きな意味があります。
- 血圧を定期的に測る
- 健康診断で血糖値を確認する
- 喫煙している方は禁煙を考える
- 適度に運動する
- バランスの良い食事を心がける
- 体重を適正に保つ
こうした一つひとつの積み重ねです。
「12.6年」をそのまま自分に当てはめなくて大丈夫です
ここで注意していただきたいことがあります。
今回の研究で示された「12.6年」という数字は、研究対象者全体を統計的に解析した結果です。「高血圧があるから、自分の認知症のない期間が○年短くなる」と個人にそのまま当てはめることはできません。また、この研究は観察研究であり、「高血圧・糖尿病・喫煙を治療すれば12.6年延びる」と証明した研究でもありません。
ただし、「血管リスクが重なるほど、認知症を発症せずに過ごせる期間が短い」という関連が示されたことには、大きな意味があります。
脳を守ることは、血管を守ること。そして血管を守ることは、心臓や全身の健康を守ることにもつながります。「まだ認知症の心配をする年齢ではない」と思っている方にこそ、血管の健康管理を始めていただきたいと思います。
お茶の水駅前生活習慣病クリニックでは、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病について、薬物治療だけでなく、食事や運動などを含めて、一人ひとりの生活に合わせた健康管理をご提案しています。
将来の健康は、今日の血圧や血糖値をどう管理するかから始まります。「健康診断で少し引っかかったけれど、病院に行くほどなのかな?」そんな段階でも、ぜひ一度ご相談ください。
一緒に健康的な人生を考えていきましょう!
【参考文献】
Hu J, Coresh J, Smith JR, et al. Midlife Vascular Risk Burden and Dementia-Free Survival Years: The Atherosclerosis Risk in Communities Neurocognitive Study. Neurology Open Access. 2026;2(3). DOI: 10.1212/WN9.0000000000000152.
お気軽にご相談ください。
それでは、次回のブログでお会いしましょう。
〈執筆者情報〉
内科・神経内科 渡邊 由衣 医師
診療日・時間
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2019年北里大学卒業。東京医科歯科大学病院(現:東京科学大学病院)や二次急性期病院にて勤務しつつ、2021年より医療法人社団縁風会のユアクリニックお茶の水・ユアクリニック秋葉原にて勤務開始。2025年より同法人が新設したお茶の水駅前生活習慣病クリニックへ異動し、多忙な患者の生活に寄り添いながら健康を支える医師として活躍。
日本内科学会認定内科専門医、日本神経学会 神経内科専門医
