胸の痛み
こんにちわ(^^)
お茶の水駅前生活習慣病クリニック、内科/循環器専門医のまたよしです
今回は、「よくわからない胸の痛み」について考えてみましょう
💔 胸の不安、その正体は?「心臓神経症」と「INOCA」の違いと向き合い方
何となくと続いている胸の痛みや動悸。病院で検査を受けても「異常なし」と言われると、かえって不安になってしまうことがありますよね。この記事では、そんな胸の不安に深く関わる「心臓神経症」と「虚血性非閉塞性冠疾患(INOCA)」という二つの病態について、その特徴と違い、そしてどのように向き合っていくべきかを探ります。
1. 「心臓神経症」とは?:心のSOSが体に現れる
🔍 どんな病態?
心臓神経症は、心臓そのものに器質的な病変がないにも関わらず、心臓病を思わせる様々な症状(動悸、胸痛、息苦しさなど)が現れる病態です。医学的には心臓不安神経症や不安障害の一部として捉えられることもあります。
🩺 主な症状
動悸・頻脈: 心臓がドキドキしたり、速く打つのを感じる。
胸痛: 鋭い痛みや圧迫感。特定の動作やストレスと関連することが多い。
息苦しさ・過呼吸: 深い呼吸ができないと感じる。
めまい・ふらつき
強い不安感: 「自分は重い心臓病ではないか」という強い恐怖や不安。
🤔 原因は?
主な原因は、精神的なストレスや不安、過労などです。自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが崩れることで、心臓の働きが過敏になり、症状として現れます。検査で心臓に異常がないことが確認されているため、「気のせい」と片付けられがちですが、患者さんにとっては非常につらい現実の症状です。治療としましては、一般的なカウンセリングや漢方、ケースによっては抗不安薬などが使用されます。
2. 「虚血性非閉塞性冠疾患(INOCA)」とは?:見逃されがちな心臓の異常
🔍 どんな病態?
虚血性非閉塞性冠疾患(INOCA: Ischemia with Non-Obstructive Coronary Arteries)は、冠動脈(心臓に血液を送る血管)に明らかな狭窄(閉塞)が見られないにもかかわらず、心臓の筋肉に虚血(血液や酸素の不足)が起こっている状態を指します。
INOCAはさらにいくつかのタイプに分類されますが、代表的なものとして以下の二つがあります。
冠攣縮性狭心症 (CSA): 冠動脈が一時的に痙攣(けいれん)して細くなり、血流が悪くなる。
微小血管狭心症 (MVA): 心臓のさらに奥にある小さな血管(微小血管)の機能異常により、血流が低下する。
🩺 主な症状
胸痛: 労作時(運動時)や安静時(特に夜間や早朝)に現れることが多い。
胸の圧迫感や締め付けられるような感覚。
動悸や息切れを伴うこともある。
🤔 原因は?
主な原因は、血管の機能的な異常が原因です。具体的には、血管内皮の機能低下、自律神経の関与、ホルモンバランスなどが影響すると考えられています。特に微小血管の異常は、通常のカテーテル検査(メインの冠動脈に対し狭窄の有無を調べる検査)では見つけにくく、見逃されやすいことがあります。
3. 大きな違いはどこ?
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特徴 |
心臓神経症 |
虚血性非閉塞性冠疾患(INOCA) |
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病態の本質 |
精神的・自律神経的な要因による機能的な症状 |
血管機能の異常による虚血(酸素不足) |
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心臓の器質的異常 |
なし(心臓の器質的な病気はない) |
血管の機能的な異常(狭窄は軽度またはなし) |
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虚血の有無 |
なし(検査で虚血は証明されないことが多い) |
あり(微小血管や痙攣により実際に血液が足りていない) |
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主な治療 |
カウンセリング、漢方、抗不安薬など |
循環器内科での薬物療法(血管拡張薬など) |
🚨 最も重要なポイント
INOCAは、放置すると心筋梗塞などのリスクを高める可能性があるため、正確な診断と適切な治療が必要です。一方、心臓神経症も、QOL(生活の質)を著しく低下させるため、心のケアが非常に重要です。
4. あなたが最初にするべきこと
もし、あなたが胸の痛みや動悸で悩んでいるなら、最初にするべきことはただ一つです。
👉 まずは 循環器内科 を受診し、心臓と血管に器質的な異常がないかを徹底的に調べてもらうこと。
- まずは心電図、採血、心エコー検査など、簡易なところから探ります。
- もし、これらの検査で異常がないのに症状が続く場合、より専門的な検査(負荷心電図、冠動脈CT、必要であればカテーテル検査)を行います。厳密にINOCAの診断をつけるには、特殊な心臓カテーテル検査が必要となります。近隣で施行している高次施設に、適切に紹介させて頂きます。
あなたの胸の不安が、どちらのメッセージなのかを知ることが、回復への第一歩です。どうぞ、一人で悩まず専門医に相談してください(^^)。
〈執筆者情報〉
内科・循環器内科 又吉 周 医師
2012年東京医科大学卒業。東京・千葉の総合病院にて循環器内科医とし勤務した後、医療法人社団縁風会のユアクリニックお茶の水にて勤務開始。2025年より同法人が新設したお茶の水駅前生活習慣病クリニックへ異動し、働き盛り世代の健康維持をサポートする医師として活躍。
日本内科学会内科認定医・内科専門医、日本循環器学会循環器専門医、日本心血管インターベンション学会認定医、日本禁煙学会認定指導医
